警察庁発表によると、2019年の交通事故の発生件数は38万1,002件、交通事故死者数は3,215人でした。昭和24年以来67年ぶりの3,000人台となった2016年から毎年減少しています。しかし、死者数のうちに占める65歳以上の高齢者は1,782人で、その割合は5割を超えています(55.4%)。過去最多だった2018年の55.7%より0.3ポイント減少しましたが、交通事故死者の5割以上は高齢者であることは変わっていません。
これは日本が超高齢社会(=65歳以上の人口が総人口の21%以上を占める社会)ということを色濃く反映している結果ともいえ、統計的には当然の結果かも知れません。しかし、"当然の結果"として済ますわけにはいきません。
近年問題となっているハンドルの操作ミスやブレーキとアクセルの踏み間違いによる事故、高速道路の逆走行など、高齢者が死亡事故を起こしやすい背景もあります。しかし実は、高齢者の死者数は、自動車乗車中よりも歩行中の死亡事故の方が多いのです。
歩行中の死者数を年齢層別にみると、高齢者が70%と大きな割合を占めており、致死率が高くなっていることがうかがえます。しかし、死傷者側に横断歩行以外の横断や信号無視などの違反があることも多いのが現状です。
たしかに、横断歩道がない場所を横断する高齢者に遭遇することは珍しいことはないはず。商店街やスーパー、病院などが近くにあるエリアはこのような道路横断者が多いです。高齢者本人にも、「若いころのように素早く横断できる」とか「自動車が来ても止まってくれるに違いない」とかいうような過信がないとは言い切れませんし、「明らかに向こうがマナー違反だ!」という場面もあるでしょう。しかし、自動車と歩行者では、圧倒的に歩行者が交通弱者。ドライバーはそんな過信も含めた高齢者の気持ちも汲んだ上で、慎重な運転をするようにしましょう。
超高齢化社会になってから久しいですが、その社会の中で車を運転するということの意味をもう一度見つめ直し、ホスピタリティドライブ(思いやり運転)を心がけなければいけません。ホスピタリティドライブとは、その名のとおり思いやりを持って運転することです。この時代、これまで以上に高齢者に対してのホスピタリティ(思いやり)が大事なのです。